今週の物欲 Vol.4〜 バーミキュラの鋳物ホーローフライパン 〜人類史上最高のフライパン??

バーミキュラの鋳物ホーローフライパン 26cm
・価格 15,300円(税込16,830円)+専用フタ 3,700円(税込 4,070円)
(初期ロットは完売、6月以降は購入可能)
・マニアー度 ★★★★
・レアー度 ★★★
・前代未聞度 ★★★★★
実は私は調理器具マニアーなのですが、今回の物欲は日本のホーロー調理器具メーカー、バーミキュラ社の鋳物ホーローフライパンです。
このフライパン、2020年の4月に発売されたのですが、予約分のみで完売してしまい現在市場に出回っていない状況です。
このため、昨今のマスクやアルコールと同様に転売ヤーが買い占めており、ヤフオクやメルカリでは4月現在、約2倍の値段で取引されています。
転売ヤーという輩は、本当にどこにでも出没しますね。
今はネットで売りさばくルートが簡単に確保でき参入障壁が低いことが、彼らの様な下等な存在を生み出しているのでしょうね。
もちろん、高い値段で買う人が存在するということも、このシステムが成り立つ要因な訳ですが。
初期ロットは売り切れですが、6月まで待てばアマゾンなどECサイトでも取扱いをする予定ですので、欲しい方はもう少し待ちましょう!
さてこのフライパン、個人的には人類史上至高のフライパンの1つにノミネートしています。
詳細な特徴は後ほどご紹介しますが、日本人のモノ作り精神の粋が凝縮されていると言っても過言ではありません。
よくぞここまでこだわりを残したまま、量産化することができたなーという思いで、頭が下がります。
ということで、マニアー度は★★★★、レアー度は★★★です。
なお、これまで誰も成し得なかったことを達成しているため、前代未聞度を★★★★★としました。
バーミキュラについて〜 日本発の本格的鋳物ホーローメーカー
ここで、バーミキュラ社のご紹介。
会社ホームページに、沿革が掲載されていますので引用します。
1936.11 創業者 土方司馬一 が 土方鋳造所 を創立。
1947.05 (有)愛知製作所を設立/愛知式各種ドビー機を開発。
1961.07 社名を愛知製作(株)と改称。
1965.05 社名を愛知ドビー(株)と改称。
1983.06 2代目社長 土方一久が代表取締役に就任。
2001.06 現社長 土方邦裕が入社。
2006.12 現副社長 土方智晴が入社。
2008.01 土方邦裕が3代目代表取締役社長に就任。
2010.02 鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」を開発。
なるほど、会社の起源は愛知の町工場のようですね。
初代・2代目が細々と続けてきたそれまでの事業を、3代目である現社長が一気にリテール向け鋳物ホーローの分野にピボットし、事業を成長させたということでしょうか。
この辺りは、日本酒業界など伝統的な産業において若手社長が新しいやり方を導入し、革新的な製品を次々と生み出している状況に似ていますね。
バーミキュラの場合は2人の兄弟が仕掛け人なのですが、兄は豊田通商、弟はトヨタ自動車という愛知を代表する企業に就職して外の世界を見てきたそうです。
もし外の世界を経験せずに直接町工場に就職されていれば、バーミキュラのような革新的な製品は生まれなかった可能性が高いと感じます。
さて、バーミキュラとして最初の製品は、2010年に発売された「オーブンポットラウンド22cm」です。
いわゆる鋳物ホーロー鍋ですが、この分野では海外のル・クルーゼとストウブの2大メーカーが、日本市場でも圧倒的な支持を得てきました。
正攻法でいくと彼らの牙城を崩すのは至難だったのだろうと想像します。
そこで、彼らはこのカテゴリーで勝負するため、「無水調理」という要素を加えた製品を開発します。
「無水調理」とは、要するに圧力鍋を使って内部の気圧を高め、通常の熱伝導に加えて放射熱と対流を使って調理する技術です。
鋳物ホーロー鍋では、鋳物の特性上どうしても工作精度が低くなるために無水調理ができず、専用のステンレス鍋にその役割を渡さざるを得ませんでした。
バーミキュラは、鋳物に加えて精密加工の技術を持ち合わせていたため、鋳物ホーロー + 無水調理 というイノベーションに挑戦したのです。
(詳細については、メーカーの開発ストーリー https://www.vermicular.jp/aboutus/story/を参照)
こういう伝統と先端のコラボレーションは、今後の日本を成長させていくキーファクターになっていくかもしれませんね。
応援したいメーカーさんです。
鋳物ホーローフライパンの特徴〜 最先端の技術と繊細さが同居したハイスペックな調理器具
それでは、この最新フライパンをご紹介していきます。
まずそのスペックから。
メーカーの紹介の中に、鋳物ホーローフライパンの特徴として水分を瞬時に蒸発させる、ということが紹介されています。
「素材によって250度の温度で5ccの水が何秒で蒸発するか」という比較なのですが、見てみると・・
・ステンレス:404秒
・アルミフッ素コート:312秒
・鋳鉄(コーティング無し):94秒
・バーミキュラフライパン:3秒
えっ?? 普通のフライパンより100倍も速いですよ!
ちなみに実使用でもこのくらいの感覚です。一瞬で水分は蒸発します。
バーミキュラの宣伝に偽りなし。
次に、大きさ及び重さについて。
鋳物を使っているため、重いというイメージがあるかもしれませんが、このフライパンの重量はわずか1.1kg。
普通のアルミ製フライパンとほぼ変わりません。
この軽さを実現したのが、その「薄さ」にあります。
【ノギスで測ってみる】

実際にノギスで正確に測ってみると、フライパンのエッジの部分で2.15mm。
若干開いている箇所なので、メーカー公称の1.5mmは正しいと思います。
コーティングを含めた厚みですので、製造時の鋳物の厚みはおそらく1.3-1.4mm程度でしょう。
この薄さを実現するのに、どれほどの努力があったのでしょうか。
頭が下がる思いです。
そして、その他のディテールについて。
我が家のモデルは、取っ手がオークの無垢のタイプ。他にウォルナットの仕様があります。
集成材ではなく無垢なので、非常に質感は良いです。
また、フックの部分も鋳物ですが、フライパン本体と独立する構造のため、熱は全く伝わりません。
専用の蓋も含め、細部のデザインにも抜かりはないです。
蓋との接触面は極めて精緻に作られており、普通のフライパンとは違い密閉度が高くなっています。
この辺りは無水調理での経験が活きているのだと思います。
実際に料理してみる〜 全く新しい体験
それでは実際にこのフライパンを使って調理してみたいと思います。
まず、ホームページでもオススメされているのが、もやし炒めです。やってみます。

ごく普通のスーパーで売っているもやしを買ってきて、炒めてみます。
まず油をしっかりとフライパンに馴染ませます。

予熱を30秒ほどしておくと、あっという間にもやしの表面に付着していた水分が蒸発します。
1分ほど炒め、表面が透き通り始めたら塩コショウで味付け。
これだけ。

食べてみます。
今まで食べたことのあるもやし炒めと全然違います!!
表面には完全に火が通っているのに、芯が残っていてシャキシャキしています。
しかし全く水っぽくなく、余分な水分が飛んでいるためか味が凝縮されています。
今回は塩コショウだけでやってみましたが、豆板醤ベースで作ったピリ辛ソースや、焼肉のタレで作ってもきっと美味しくできるかと思います。
次に卵焼きを作ってみます。

しっかり予熱した後に卵を流し入れると、一瞬で水分が蒸発。
普通のフライパンとは要領が全く異なりますね。

卵焼きの場合、比較的低温で調理した方がこのフライパンには向いていると思います。
高温で熱しすぎると、砂糖の糖分が焦げやすいので。

中がフカフカで、素晴らしい味わいの卵焼きになりました。
おそらくフライパン面に火が入りやすい一方で、逆側は生に近い状態なので、折りたたんだ時に絶妙な状態で仕上がるのだと思います。
いいですね〜。
結論的なもの
正直なところ、バーミキュラフライパンは相当に高価です。
普通のフライパンなら、10個以上買えますよね。
しかし、得られる満足感は値段以上のものがあり、普通のフライパンを10回買い直したって得られない唯一無二の価値があると実感しています。
ただし、使いこなしには若干の注意が必要です。
一瞬で水分が蒸発するので、煮込み料理にはまず向きません。
また、フッ素コーティングのアルミフライパンとは違って油をしっかり使う必要があり、コーティングパンしか使ったことがない人だと油の使い方が分からず、焦がしてしまう恐れがあります。
私の知人の主婦も、あっという間に焦がしてしまい、手放してしまう人がいました。
(焦がした場合でも、重曹を使って落とす方法など細かいメンテナンス法をメーカーが指定してくれているんですがね・・)
要するに、お手軽に料理をしたい方にはあまり向いておらず、こだわりを持つ人のために作られた逸品だということですね。
イージーな製品ではないため、最低限のメンテナンスを日頃からやっておく必要はあります。
この辺りはフライパンというより、中華鍋の管理に近いものがあると思います。
細部まで技術・デザインにこだわり、至高の製品を作りたいという強い意志を内包した商業製品。
メーカーのこだわりを深く理解した上でその精神に共感し、リスペクトを持って使わせてもらうくらいの気持ちで製品と対峙できる、紳士淑女の皆さんに使ってほしいですね。
そういう方には、間違いなくオススメです!